- 2019/8/16理事長コラム
- 【かんとくの独り言(第8回)】 「調和」の大切さについて
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【かんとくの独り言(第2回)】
組織的にプレーすること、「コレクティブ」について
チーム戦術の観点から言えば、「コレクティブ」(日本語に直訳すると《集団的》)という言葉で表現されるものが、現代サッカーではとても重要な要素だ。指導者が、“組織的にプレーしよう”と言うことと「コレクティブ」は同じだと理解すればいい。
この「コレクティブ」という用語は、2002年日韓ワールドカップで日本代表監督を務めたフィリップ・トルシエ氏が強調したものだ。1998年フランスワールドカップの後に日本代表監督に就任して以来、ほぼ4年間、彼は日本のサッカーに、選手が連動して動くこと、連動してボールにプレスをかける方法を根付かせてくれた。現代サッカーでは、この「コレクティブ」が身についていなければ、上のレベルでプレーすることは難しい。
「コレクティブ」なサッカーを浸透させる時に一番大事なことは、基本的に意識を常に前に置くことだ。
ゴールを守れと言うと、選手は本能的に後ろに下がる。しかし、「コレクティブ」の基本は、意識を常に前に置くこと。もちろん、ディフェンスラインの背後を相手が狙っている時には、ラインを下げるが、下がって後ろ向きにディフェンスするために下がるんじゃないんだ。ボールが蹴られる前に一旦ラインを下げるのは、ボールに対して前向きにディフェンスするため。それ以上深いボールは、ゴールキーパーが前に出て処理する。
繰り返すが「コレクティブ」の原理で重要なのは、前向きということ。ボールを奪った瞬間に、すぐに攻撃に出ていくことが想定されている。別の言葉で言えば、前に意識がある限り、守備がそのまま攻撃になる。
この意味を理解することが、現代サッカーに適応するためにとても大事だ。
沖縄に行くたびに、自分は組織的に動くこと=「コレクティブ」の重要性を選手や指導者に伝えている。何度も繰り返すのは、選手が「コレクティブ」を忘れるからなんだ。一度できたらあとはOKにはならない。人間は繰り返していないと必ず忘れてしまい、できたことができなくなってしまう。
組織を強調したら、選手の個性が生きなくなるのではという人がいるが、全く逆だ。チーム全体のバランスが崩れていれば、個性が発揮されにくくなる。
チームとして組織的に動くという土台がしっかりしてくれば、仕上げは選手の自由なアイディアと自由な選択の出番だ。現場に出た時は、みんなのアイディアのあるプレーを楽しみにしている。時々、こちらが予測した以上のことをやる選手がいる。“おっと、そう来たか!”と嬉しくなってしまう瞬間だ。
“サッカーでは試合中に選手がやってはいけないことが一つだけある。それは何だと思う?”
自分の問いかけに、多くの場合、子供たちは“ミス!”と答える。
“違うなあ”
しばらく考えさせてから、
“迷うこと、それが一番してはならないことだよ。”
“どうプレーするかは自分で決めればいい”
と伝える。
組織的にプレーしようとして選手が自分の判断で失敗しても、私はその失敗を指摘したり、咎めたりはしない。
失敗したことに気がついているが、それを持ち出して注意することもない。やろうとしたことが試合の流れやチームが必要としていることに合っていれば、
“今の判断悪くないよ!”
“よく見てた”
などと言って、選手の判断を褒めてあげる。もちろん、プレーが上手くいったら、
“素晴らしい”
“グッド”
声が聞こえない距離にいる場合は、自分の頭の上で拍手をして、今は良いプレーだよと伝えるようにしている。
【了】
前回の理事長コラムはこちらからご覧ください
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